国立がん研究センターや、京都大学などのチームの調査によれば、国内でリスクが中レベルに分類される再生医療のうち、約4分の1はその治療法が安全だという根拠に乏しいとされています。国内で提供される再生医療は、使う細胞などに応じてリスクが高~低の三つに分類されます。チームは、2019~2020年度リスクが中レベルに分類される再生医療の計画書の内容を分析しています。その結果、約4分の1の計画は、安全性の根拠に乏しく、約3割は心筋梗塞の治療を産婦人科医が実施するなど、医師の専門性と治療内容のミスマッチが推定されています。
国内で再生医療を行う医療機関は、認定再生医療等委員会で、計画書の事前審査を受ける必要があります。病院やクリニックが提供する再生医療の計画を、第三者の立場で事前に審査されます。病院の開設者や学術団体などが設置でき、厚生労働省や各地の地方厚生局が認定します。医学や法律の専門家のほか、一般の立場の人も入ることが義務づけられ、委員会の設置者と利害関係がない人も加える必要があります。
厚生労働省に提出されている再生医療の計画書は、研究が108に対し、治療が約5千と圧倒的に多くなっています。チームによると、2020~2021年度に約5万8千人の患者が、治療区分の再生医療を受けています。チームが分析した中リスクの再生医療は、治療の約25%で、残り75%をほぼ占める低リスクの審査にも、委員会の独立性が疑われる例が多くみられます。当初の想定を大幅に超える数の委員会が認定され、質が担保されていない状況にあります。
(2023年4月19日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)