少子高齢化の日本では実感が少ないのですが、世界では人口が増え続けています。食料危機が起こる可能性があり、気候変動による生産への影響も予想されています。食料自給率(カロリーベース)は、現在の食生活において、国内生産品をどの程度消費しているかを示す指標です。日本の食料自給率は、1965年度の73%から1998年度には40%まで低下し、それからは横ばいの状態が続いています。
三菱総合研究所によれば、2050年には農業経営体数が2020年比で84%減少し、農業生産額は同比で52%減ると推計しています。農業従事者は高齢者が多く、後継者が少ないことも原因の一つです。国内農業の生産性を高める方法の一つとして、注目を集めるのがスマート農業です。生産現場における様々な課題を、ロボットやAIを活用して解決するものです。
ロボットやICTの導入には一定のコストがかかります。費用に見合う収益化ができないと導入は進みません。障壁は農地規模です。スマート農業の恩恵を受けるには、広い農地が必要になります。企業化している経営体が増え、農地を大規模化することで、スマート農業の普及が期待されています。
小規模農家が多い国内において、スマート農業と同等に重要なのがバイオ系分野です。肥料や農薬を使わない作物などの開発が進んでいます。品種改良により、生産性向上や省力化を図ります。品質が向上し、収益向上も期待できます。
(2023年5月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)