円安と株高の共振

主要国・地域の通貨の値動きを見ると、昨年末比の下落率のトップは4.3%の円です。対ドルだけでなく、対ユーロでは15年ぶりに安値を付け、スイスフランに対しては過去最安値圏まで下落しました。ユーロや英ポンドは上昇しているだけに、円の下落が際立っています。2023年に円が独歩安に転じた背景には、日銀の金融緩和政策の継続があります。主には米国が政策金利の引き上げを続け、日米金利差が開いたことで円安が加速しました。
円安は、輸出企業の業績改善を通じて日本株相場の上昇要因になりやすいとされています。日経平均株価が33年ぶりの高値を付けた原動力になってきています。2月末以降の値動きをみると、米欧の株価がほぼ横ばいで推移する中で、日経平均は13%上昇しました。海外の投資家は日本株を買うと同時に、低金利の円を売って、高金利のドルを買う取引を組み合わせるケースが多くなっています。このため株価が上がると円安が進むという関係も目立ち、その円安がさらに株高を呼び込むという循環が生まれています。
しかし、日米金利差が縮小すると、円高・株安に転じるリスクがあります。焦点は米国の景気です。米景気の減速で(米金利が低下すれば)、1ドル=125円程度まで円高が進み、日経平均も3万円を割る可能性があります。

(2023年5月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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