国立社会保障・人口問題研究所によれば、未婚の若者が理想と考える女性のライフコースは、男女とも両立が最多です。第1子出産後の女性の就業継続率は、約7割に上昇しており、今後も両立を目指すカップルは増えそうです。現状の支援制度は、原則子どもが1歳までの育児休業や、3歳までの短時間勤務などです。育児休業では雇用保険から給付金も出ます。
政府は制度拡充を検討しています。男性の育休促進とともに、子どもが2歳未満の短時間勤務への給付金創設が盛り込まれました。3歳から小学校就学まで短時間勤務やテレワークといった柔軟な働き方を選べるようにすることや、こどもの看護休暇を小3修了時までに延ばすことも検討されています。
今回の政府の支援拡充は、男女がともに仕事と子育てを担うことを強調しています。これまで制度利用は女性に偏っていました。キャリアを築くことが難しく、管理職の数もなかなか増えませんでした。利用の偏りが、長時間労働を前提とし働き方や、男性は仕事・女性は家庭といった性別役割分担意識を温存した面もあります。OECDによると、日本の男性の家事・育児時間は1日当たり41分です。男女差は5.5倍で、OECDの中で突出しています。
日本では、いまだに女性が働くから少子化が進むといった誤解があります。欧米では、日本より高い出生率と女性管理職比率を同時に実現している国は数多くあります。働き方だけでなく、家庭内の家事・育児分担の見直しは、少子化対策にも女性の力を生かすうえでもプラスに働きます。企業の中には、転勤制度を見直したり、早いうちに経験を積ませたりといった工夫をするところもあります。
(2023年5月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)