総務省の家計調査によれば、世帯主が39歳以下の家計が持つ株や投信など有価証券の額は、2022年に平均105万円と、10年前の3.5倍に増えています。この2年は前年比で4割前後の伸びを示しています。保有額は高齢層が多いものの、60歳代や70代以上はこの10年の伸びが1.2~1.4倍にとどまり、若者の積極姿勢が顕著です。
今年65歳のリタイア年齢を迎える人は、日経平均価が史上最高値を付けた1989年に働き盛りの31歳でした。人生の大半が株価低迷と共にあり、デフレ下で預金こそ確実な選択肢でした。今年30歳になる人は、アベノミクスが本格化した2013年に20歳となり、上昇相場を見てきています。
この10年間日本企業は、海外での投資やM&Aに取り組む一方、人口が減り市場が縮む国内投資には消極的でした。OECDによれば、設備や建物、ソフトウェアなど成長の基盤となる資本のストックは、過去10年で米国は17%、ドイツは7%増えていますが、日本は0.4%増どまりです。潜在成長率が伸び悩み、国民の所得も低迷しています。
企業が個人マネーを集めて国内投資を増やし、成長の果実を賃上げや株主還元に向ける好循環を目指すべきです。若者のマネーは動き出しています。33年ぶりの株高の持続性は、企業や政府の覚悟と挑戦にかかっています。
(2023年6月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)