内密出産の流れ

熊本市の慈恵病院は、母子ともに危険な孤立出産を避けるため、匿名でも病院が受け入れる内密出産を実施しています。内密出産とは、匿名で出産することを望む母親が、特定の人だけに身元を明かして出産することです。



病院は本人の意向を尊重し、対応しています。育てられない場合は、児童相談所に保護され、乳児院に預けられます。戸籍は地方自治体がつくり、特別養子縁組を前提とする養育などが想定されます。内密出産してから気持ちが変わり、身元を明かして自分で育てることを選ぶ女性もいます。その場合は病院や行政が養育環境などを支援しています。
内密出産の取り組みは、こうのとりのゆりかごの延長線上です。親が育てられない赤ちゃんを匿名で受け入れるもので、2007年に始め、2022年度までに170人が預けられました。この間、病院の窓口には妊娠を誰にも言えず、家族は頼れない、中絶するお金がないといった声が寄せられ、病院で産んでゆりかごに預けたいと相談されることもありました。ドイツで法制化されている内密出産制度を参考に、2019年12月に内密出産の受け入れを表明しています。
厚生労働省によれば、2007年1月~2020年3月に生後0日の赤ちゃん119人が心中以外で亡くなっています。予期せぬ妊娠や孤立出産が原因の一つです。妊娠は1人ではできないのに、男性が責任を果たさないまま、女性が困難に直面する状況そのものを変えていくべきです。内密出産は、母子にとって最後のとりでとなっており、匿名性を守る配慮や仕組みが必要です。

 

 

(2023年6月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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