発達障害への配慮

2016年施行の改正障害者雇用促進法は、障害がある人への合理的配慮の提供を企業に義務づけています。しかし発達障害の人が配慮を求めても応じず、訴訟にまで発展する例も散見されます。その背景には、合理的配慮という概念の難しさと、発達障害そのものの難しさがあります。
発達障害とは、生まれつき脳の働きにかたよりがある障害で、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)などがあります。ADHDの人は忘れっぽかったり、落ち着きがなかったり、衝動的に行動したりします。ASDの人は、相手の気持ちを読み取ることが苦手だったり、こだわりが強かったりします。以前は知能や言語に遅れのないASDの人を、アスペルガー症候群と呼んでいましたが、今はASDに含まれます。LDは、読み書きや計算が苦手です。
文部科学省の2022年の調査によれば、通常学級に通う小中学生の8.8%に発達障害の可能性があると推計されています。6.5%が学習面に、4.0%が不注意や多動性、1.7%が対人関係に問題があり、いずれも女子より男子の方に多くみられます。大人の発達障害も注目されています。WHOの調査によれば、ADHDがある大人は3%ほどと報告されています。所得の高い国の方が多い傾向にあります。米国では大人の2%ほどにASDがあるとの報告があります。
子どもの頃はそれなりにやり過ごせても、遅刻やうっかりミスが多い、優先順位がつけられない、周囲とうまく人間関係を築けないなどの特性が、働く上でつまずくきっかけになる人もいます。上司は発達障害への理解を深めた上で、コミュニケーションを密に取ることが大切です。

 

(2023年6月7日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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