健康保険組合は、1990年代初頭に1,800を超えていました。医療費の増大に伴う財政難で解散や合併が続き、直近では1,400を割っています。半面、中小企業が入る全国健康保険協会(協会けんぽ)の事業所数は、10年で5割増えています。企業の保険料だけでは賄えずに、国が1兆円規模を補助しています。独立採算のスタートアップ健保組合の設立は、財政悪化に苦しむ企業健保組合の運営に一石を投じることになります。
企業独自の健保組合を持つことが多い大企業と異なり、スタートアップは1社ごとの規模が小さく、現状は協会けんぽに加入していることが多くなっています。協会けんぽは、中小企業を中心に約4,000万人が加入しています。中高年になると生活習慣病にかかる人も多く、1人あたりの医療費も膨らみがちです。
新設するスタートアップ健保組合は保険料率については、所属する従業員の平均年齢は34歳と若く、1人あたりの医療費は軽く済みます。保険料率を8%台後半に抑えられる可能性があります。保険料は会社と従業員が折半します。保険料負担が下がれば、事業への投資や社員の手取り収入を増やしやすくなり、労使ともに利点があります。
(2023年6月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)