日本での臓器提供者は、米国の68分の1程度にとどまっています。移植医療体制はなお不十分で、違法とされる仲介を招いた一因とされています。再発を防ぐには脳死判定などに習熟した医師の育成や、臓器提供への理解を促す仕組みづくりが必要になります。2021年の人口100万人あたり臓器提供者数は、米国やスペインが40人を超えています。日本は0.62人で、韓国と比べても14分の1程度にとどまっています。
脳死下での臓器提供を可能にする臓器移植法が施行されたのは1997年です。書面での本人の意思と家族の承諾を要件とする厳格なルールが適用され、当初は臓器提供者はわずかでした。家族の承認で提供を認める2010年施行の法改正を機に、提供者が増えてきています。
医療機関の受け入れは道半ばです。2021年度末時点で脳死下の移植手術に必要な体制を整備した全国449施設のうち、約6割は手術を実施したことがありません。国内移植希望登録者は3月末で約1万7,800人です。海外に渡航して移植に望みを託す患者も少なくありません。厚生労働省によると、海外で臓器移植を受けた後に国内の医療機関に通院している患者は、3月末時点で543人もいます。
(2023年7月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)