国立青少年教育振興機構が、日米中韓4カ国の高校生の進路と職業意識に関する国際比較をしています。日本は仕事に安定性を求める傾向が強まっており、転職や起業を重視する最近の経済界の潮流とのズレが目立ちます。
労働の捉え方の差も大きく、仕事や働くことのイメージでは、日本は生活のためを挙げる生徒が圧倒的に多くなっています。やりがいがトップ、楽しいが次点だった米国の高校生とは対照的です。日本は労働観が消極的なものにシフトしています。職場見学や就業体験(インターンシップ)を経験した割合が、日本は1割前後で、2~4割の米中韓に比べかなり少なくなっています。学校が社会とつながり、生徒が実際の職業に触れる機会を増やしていく必要があります。
大学院博士(課程)まで進みたいと答えた日本の高校生は、1.6%に過ぎません。米国は14.6%、中国は18.9%で韓国も6.0%でした。日本は社会の中で活躍する博士号取得者の少なさが影響しています。
気がかりなのは挑戦心の薄さ、起業マインドの弱さです。自分の会社や店をつくりたいと答えた生徒は8.5%、およそ12人に1人しかいません。米中韓は23~27%、4人に1人です。転職や起業を活発にすることが成長のカギの一つとなる今、この差は大きいと思われます。転職や挑戦への意欲を問う質問でも、日本は肯定的な答えをした割合が低くなっています。終身雇用的要素が残る労働市場や国民性とも絡み、変えるのは容易ではありません。変革型のキャリア教育を小学校から積み上げることが大切です。社会は変えられる、失敗しても再起できるといった意識を養う教育活動が必要です。
(2023年7月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)