ユニセフの2021年の政策評価によれば、日本の育休制度充実度はすでに先進国中1位に輝いています。父親に認める育休期間の長さが奏功しています。しかし、足元で男性の育休取得率は14%と低迷しています。5割超が珍しくない欧州各国と格段の差があります。制度を整えても運用が伴っていません。
育休のうち4週間分を父親に当てるパパ・クオータは、ノルウェーやスウェーデンなど北欧が先進的に取り入れ、ドイツも採用しています。父親が取得しなければ、その部分の給付金を受ける権利を失います。取らなければ損という設計で、男性育休を当たり前にしています。男女全員参加型の育児の実現には、文化的、イデオロギー的な変化を起こすことこそが大切です。
世界の少子化対策の主流は、給付金ではなく、男女ともに無理なく子育ても仕事もできる環境整備にあります。給付金は対処療法やきっかけに過ぎないと思われます。首相が、次元の異なると位置づけた少子化対策には、給付金拡充のメニューが並んでいます。長時間労働の是正や柔軟に休める風土づくりといった対策は掲げてはいますが、抜本策とは言えません。
夫婦共働き世帯の割合は、およそ7割に達します。給付金の拡充だけで、子どもを持ちたい、もう1人産もうと考える夫婦は多くありません。経済的な基盤に加えて、育児に割ける時間を確保できることが大切です。昭和の雇用慣行を脱し、男性の育児参加を進める形で世界一の制度に魂を込めなければ、巨額の資金もバラマキに終わってしまいます。
(2023年7月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)