高齢者の労働災害の増加

厚生労働省が発表した2022年の労働災害発生状況調査によれば、60歳以上の労働者の労働災害による死傷者が増えています。事故別で最も多い転倒は、60歳以上の労災事例で40.7%を占め、2番目に多い墜落・転落の16.5%を大きく上回っています。転倒による労災の発生率を年代別にみると、60歳以上は20代より男性で約3倍、女性で約15倍に上っています。高齢女性が特に注意が必要です。

背景には、働く高齢者が増えていることがあります。総務省の労働力調査によれば、65歳以上の就業者は2022年に、912万人で過去最多となりました。就業者全体に占める高齢者の割合も、13.6%と最も高くなっています。65歳以上の就業率も25.2%に上昇しています。
高齢者が職に就きやすくなった事情もあります。70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法などが、2021年4月から適用され、希望者は70歳まで働けるようになりました。近年では人手不足などもあって、定年後も働きたいと考える高齢者が増えています。
事業者にとっては、高齢者が安全に働ける環境作りが大切となっています。厚生労働省は、高齢者の労災防止指針であるエイジフレンドリーガイドラインを作っています。作業場所の明るさの確保や通路の段差解消など具体的な事例を挙げて、職場環境の改善を事業者に促す内容です。ガイドラインの中で、自分の身体機能や健康状況を客観的に把握することが大事だとして、定期健診を必ず受けることやこまめな基礎体力チエックを呼びかけています。

(2023年7月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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