東京への若者の流出を抑えようと、自治体が地元大学への進学を促す動きを強めています。地元進学者は、就職も地元を選ぶ傾向にあり、人口減対策の一手です。過去20年間に、出身高校と同じ都道府県の大学に進んだ地元進学率を最も伸ばしたのは石川県でした。少子化で地方大学の経営は厳しく、既存の私立大の公立化も広がっています。
文部科学省の学校基本調査によれば、2022年度に全国で高校から大学に進んだ約62万人の地元進学率は44.8%と、1971年度に調査を始めてから最高でした。2002年度比で最も伸びた都道府県は石川県で、14.5ポイント上昇の47.6%です。群馬県と和歌山県も上昇幅が10ポイントを超えています。2022年度の地元進学率は、愛知県が71.6%で最も高くなっています。東京都や大阪府に次いで大学数が多く、就職先の厚みもあることで地元志向が強くなっています。
地元以外の大学に通う学生が故郷での就職を望む割合は約3割です。対して地元の大学に進んだ学生では7割を上回っています。国は、地方に若者を引き留める側面支援として、2027年度まで10年間は東京23区内で大学の定員増を禁じています。しかし、学びの自由を縛るなど批判も強く、情報系の学部・学科で2024年度から規制を緩めることにしています。首都圏の大学は都心回帰を強めています。
(2023年7月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)