少子化による大学淘汰

文部科学省は、大学入学者数が2040年に51万人、5200年に49万人になるとの推計を示しています。2041年以降は49万~50万人で推移するとしています。2022年の63万人からは2割減るものの、下げ止まりの状態が続くのは、進学率が上昇すると想定されているからです。低所得世帯向けの奨学金拡大などにより、現在の50%台半ばから60%まで伸びるとしています。
現状の入学定員が維持された場合、都道府県別の充足率は東京都や大阪府でも8割台に落ち込みます。急速な少子化が原因で、都市部でも経営が厳しくなる大学が増えます。都道府県別の定員充足率は、2040年時点で最も高いのは、千葉県の86.6%で、最低は大分県の70.0%でした。都市部と大学が比較的多い東京都は81.4%、愛知県は82.3%、大阪府は83.8%、京都府は81.2%などはいずれも8割台です。2021年の充足率と比べると、東京都は18.6ポイント減、大阪府は19.2ポイント減となっています。
入学者の減少は、授業料や入学金が減ることを意味します。特に影響を受けるのが収入の7割を授業料などに依存する私立大学です。日本私立学校振興・共済事業団によれば、2022年の春の入学者が定員割れした私立大学は、47.5%(284校)と調査開始以来、最も高くなっています。私立大学の3割は赤字です。生き残りのため、学力不問の入試や極端な学費値下げといった安易な学生集めも広がりかねません。選抜機能の低下や資金不足による教育環境の悪化は、人材の質を劣化させ、国際的な競争力の衰退をもたらします。
都市部には進学先を求めて地方の若者が集まる構図があります。少子化が進む中でも地方大学よりは生き残りで有利とみられてきました。しかし、少子化が急速に進む中、今後は都市部を拠点とする大学も定員を埋めるのが容易ではなくなる可能性も出てきます。学生の質を高めるには定員の削減とともに、各校が教育改革で競う仕組みをつくることが求められます。

 

(2023年7月14日・7月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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