日本企業は、新卒の学生を一括採用し、様々な部署を経験させてスキルを身に付けさせるメンバーシップ型が一般的でした。人材獲得競争の観点から、ジョブ型の人事制度を導入する企業も増えつつありますが、スピードは十分ではありません。ジョブ型雇用は、職務内容を明確にして賃金などの処遇を職務記述書で定義することで、企業は人材の専門性を高めやすくなり、働く側も転職しやすくなります。
新卒で一括採用して社内で育てるメンバーシップ型において、賃金体系を職務給に変えることはなかなか困難です。IT技術者のような専門性の高い人は、別立ての賃金体系にするケースはありますが、それをもってジョブ型を採用したということにはなりません。結局、採用してからしばらくはメンバーシップ型で人材育成し、ある時点で賃金制度を変えて、職務ごとに処遇を定めるジョブ型的な運用にすることにしています。
欧米は、仕事のスキルに値札があり、転職を通じて賃金水準が上がっていきます。日本は定昇とベースアップについて労使が春闘で交渉し、全体の水準が決まりますが、個々の社員の賃上げ水準は分かりません。ジョブ型への移行を目指すなら労使交渉のやり方も大きく変える必要があります。
(2023年7月22日 読売新聞)
(吉村 やすのり)