スタートアップの育成

日本はスタートアップ育成で各国に後れを取っています。米国調査会社の2022年7月時点の国際比較によれば、ユニコーン(企業評価額が10億ドル以上の未上場企業)は米国633社、中国173社に対し、日本は6社にとどまっています。ベンチャーキャピタル(VP)が小規模で資金調達が難しいなどの要因のほか、起業意欲の乏しさが課題となっています。起業を望ましい職業選択と考える人の割合は、中国79%、米国685に対し、日本は25%と主要国で最も低い水準にあります。
OECDの調査によれば、外国人の起業環境をめぐる国際比較で、日本は24カ国中21位でした。多国籍企業の数、投資家へのアクセス、税制、国籍の取りやすさなど30項目以上の分析の結果、日本は在留資格認定の審査の厳しさや同伴する家族の就労が制約される点の評価が低くなっています。
技術革新につながるスタートアップの育成を掲げる日本で、外国人による起業の意欲や潜在力を生かせていません。企業経営者らを対象とする資格は、経営・管理で、①日本に居住する常勤職員が2人以上か資本金が500万円以上、②独立した事業所の確保などが求められています。実績や資金力が乏しい若者にはハードルが高くなっています。

米国のユニコーン企業のうち、移民が創業したのは54.8%を占めています。出身国でみるとインドが最多です。創業者や重要なリーダー職で移民が1人以上いる企業は、約8割に上っています。日本政府は起業を促すため在留資格の緩和を進めてきています。経済産業省が2018年に創設した優遇策である外国人創業活動促進事業(スタートアップビザ)もありますが、自治体が事業計画などを審査して実現可能性があると判断した場合、最長1年滞在できる仕組みです。滞在期間の延長も検討すべきです。
海外においては、イノベーションの促進や雇用創出、外国からの投資の誘致には、移民起業家が重要な役割を果たしています。官民を挙げて、意欲のある外国出身者が起業に挑戦しやすい環境を整える必要があります。

(2023年7月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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