年齢の多様性

2023年には、生産年齢人口(15~64歳)の過半数が、1980年以降に生まれたミレニアル世代やZ世代の人たちとなる見通しです。子どもの頃からデジタル機器に慣れ親しんだデジタルネイティブであり、気候変動問題も自分のことと捉える傾向が強くなっています。一足早くミレニアル以降の世代が、社会の中心となった欧米社会のように、日本も今後、デジタルやグリーンのトランスフォーメーションが急速に進みます。
日本で多様性施策というと、組織の中の少数派である女性の育成・登用が中心でした。年齢の多様性が組織パフォーマンスとどのような関係があるのかについては、日本ではあまり研究されてきませんでした。性別、障害の有無、民族性など、組織における多様性にはさまざまな要素があります。年齢に関係なく能力を発揮できる環境が求められるなか、若手がリーダーシップを取れる仕組みをつくる企業が目立ってきています。上司や職場全体に新しい視点を与え、組織のパフォーマンスを高める可能性があります。
風通しのいい職場をつくり、若手の新たな発想を取り入れることは、企業の成長のため必要な条件となります。一方で社会インフラを支える業界では、年齢を重ね、経験を蓄積してきた人材の判断力がものをいう場合もあります。多様な年齢の人が、適材適所で能力を発揮できる組織作りが求められています。
年齢の多様性が必要なのは、企業だけではなく、政治でも同じです。列国議会同盟によれば、30歳以下の国会議員は世界で平均3%おり、40歳以下でみると19%います。一方、日本の衆院はそれぞれ0.2%、6%と非常に少数です。2022年に総選挙があったデンマークの国会議員は、30歳以下が8%、40歳以下は35%に達しています。21歳の女性国会議員も誕生しています。選挙権は日本と同様18歳からですが、被選挙権も18歳からです。衆院が25歳、参院が30歳の日本よりも若者が政治に参画しやすいと言えます。
賃金が上がる将来が想像できない、子どもが欲しいと思っても踏み切れないなど、若者が抱える社会課題が知られるようになってきています。少子高齢化が進むいま、若者の視点を意識した社会づくりが益々重要になってきています。

(2023年7月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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