労働市場でシニア人材の重みが一段と増しています。70歳以上でも働ける企業の比率は2022年に4割となり、この10年で2倍になっています。建設や小売りでは、従業員の1割超が65歳以上です。人手不足の解消に向けてシニアの活用が欠かせない一方、労働災害は急増しています。円安で外国人労働者の確保も難しくなるなか、職場環境の整備が急務です。
総人口に占める生産年齢人口(15~64歳)の比率は、2022年に59%と2000年より9ポイントも低下しています。円安で外国人労働者の確保が難しくなり、子育て中の女性の労働参加の拡大も頭打ちになる中、細る現役世代を補うにはシニア人材に活路を求めざるを得ない状況です。企業などが雇う全ての従業員のうち、65歳以上の比率は2022年に10.6%(639万人)と過去最高になっています。業種別で見ると人手不足の特に深刻な建設や介護は15%に達し、運輸も10%を超えています。
目立つのが労災の急増です。60歳以上の労災の発生数は、2022年に約3万8千件と、5年で26%増えています。賃金にも課題があります。厚生労働省によると、2022年までの10年間で、65~69歳の平均賃金は6%増えましたが、70歳以上は9%減っています。シニア人材をさらに増やし、国力や産業競争力を維持するためにも、労働条件の改善に向けた取り組みが必要です。
(2023年8月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)