MRI研究の進歩

病気や怪我の画像診断に使われる磁気共鳴画像法(MRI)が1973年に発明されてから、半世紀が経ちました。体内には、水や脂肪などの成分として、水素が様々な場所にあります。強い磁場の中で、水素の原子核に特定の周波数の電波を当てると、信号を発します。信号の出方は、水素が存在する組織の種類や状態によって差が生じ、がんや出血による組織の変化などを表すことができます。

体内の立体的な画像を得る技術は、CTとMRIが双璧です。MRIは骨に囲まれた領域も細かく撮影できるので、特に脳の観察で力を発揮します。また、放射線被曝などの侵襲がほぼありません。その特徴を生かし、脳の神経回路全体を解明するコネクトーム研究が構造と機能の両面から進んできています。
神経線維に沿って水が拡散しやすいことを利用し、神経線維の走行をたどります。脳の神経細胞のどことどこが、どのような経路で繋がっているかという構造を可視化できます。脳腫瘍を切除する手術の際、手足の動作や視覚に関わる神経線維の場所などを事前に把握し、後遺症をできるだけ避けるのに役立っています。
コネクトーム研究のデータを蓄積・共有して研究に活用する取り組みが、世界で本格化しています。総合失調症やうつ病などをMRIのデータで客観的に判別し、診断を補助する技術も現実味を帯びてきています。

(2023年8月6日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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