生涯にわたって子どもを持たない人が、2005年生まれの女性の場合で最大42%に達すると推計されています。男性はさらに多く5割程度になる可能性があります。これは先進国でも突出した水準です。子どもを持たない人の増加は、少子化による人口減少を招くだけでなく、家族による支え合いを前提とした社会保障制度にも影響を及ぼします。
人口学では、50歳時点で子供を持たない女性を生涯無子と見なします。男性は、女性と比べると一般的に生殖期間が長いことなどから、年齢を区切って生涯無子を定義するのが難しいのですが、多くの国で女性より無子率が高いことが知られています。男性の場合、女性より未婚率が高いことから、およそ1割程度、生涯無子率も高いと見られています。わが国の男性では最大5割程度、2人に1人が子どもを持たない可能性があります。
1970年生まれの女性で見ると、日本以外の主な先進国での生涯無子率はそれぞれ1~2割程度ですが、日本は27%とすでに突出して高くなっています。欧米が現状のまま推移すれば、今後、日本の無子率はその2倍以上になる可能性があります。英米やドイツでは、近年生涯無子率上昇の勢いが収まりつつあります。仕事と子育てが両立しやすい環境が整い、少なくとも1人は子どもを持てるようになってきています。
日本も働き方改革をはじめ環境整備に力を入れていますが、若者の結婚や子どもを持つ意欲は低下しています。国立社会保障・人口問題研究所の2021年の出生動向基本調査では、若い未婚者の中で生涯独身でいいと考える人が急増しています。賃金の低迷や将来への不安などは根強いものがあります。
(2023年8月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)