単身世帯に対する住宅の確保

未婚率の上昇により、人口に占める単身世帯の割合は高まっています。国勢調査によると、1980年には2割弱でしたが、2020年は38%を占めています。懸念事項のひとつが安定した住居の確保です。住宅を購入する機会が得られなかった人は、借り続けることができるのか不安を感じています。既に低所得者層を中心に、家賃負担の重さが、生活の不安定さにつながっています。
1990年代までは、住宅政策と言えば持ち家推進政策でした。1990年代のバブル崩壊以降、非正規労働者の増加や未婚率の上昇を受けて、家を持つことができる人が減り、中高年世代で借家率が高くなっています。同じ中高年でも、単身世帯は家族がいる人に比べて借家率が高くなっています。全世代型社会保障の一環として、住宅政策の充実が求められます。海外では、住宅は生活の基盤と考え、家賃補助制度などを導入しているところもあります。日本では、これまで住宅政策が社会福祉に入っていませんでした。
高齢者や低所得者などに貸し渋る傾向は続いています。非正規で低所得であると家賃滞納のリスクは高くなります。高齢者に対しては、孤独死した場合の対応や近隣住民とのトラブルなどの懸念を抱える大家が多くなっています。配偶者も子どももいないと、身寄りがなく身元保証や生活支援が得られません。低所得者の中には生活保護の受給にはハードルが高くても、住居があれば何とか生活を維持できる層は多いと思われます。日本でも家賃補助制度を創設する必要性があります。

(2023年8月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。