ふるさと納税の寄付額は、過去最高の1兆円に迫り、制度のゆがみが大きくなってきています。寄付額のうち2千円を超える分は、翌年の住民税や所得税から控除されます。控除のための確定申告を省略できるワンストップ特例制度が2015年から始まり、利用が急増し、2022年度の寄付額は9,654億円、件数は5,184万件でいずれも過去最高を更新しています。
総務省は、2019年に返礼品は地場産に限り、調達費は寄付額の3割以下、宣伝費や送料などを含めた経費の総額は、5割以下とするルールを定めました。しかし、見かけ上は経費の総額が5割以下の基準を満たしていても、実際は超えているケースが横行しています。
ふるさと納税は自治体にとって、経費がかかっても寄付を集めるほど得になる仕組みです。競争は激しく、自治体間で税収を奪い合うゼロサムゲームになっています。経費率は、多くの自治体が5割近くに達しています。住民サービスに使われるはずだった税金の半額ほどが経費として消え、一部の業者が潤っています。資金が流出する都市部などでは、財源不足の懸念もあります。今こそ寄付拡大より弊害を直視すべきです。
(2023年10月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)