内閣府が2023年4~6月の労働力調査をもとに分析したところ、働き手の潜在力として期待できるのが、働きたい短時間労働者と技能が足りない労働者です。働きたくても働けない人を生み出す一因が年収の壁です。就労時間を増やしたくて、それができる労働者が265万人いるとされています。このうち4割超の118万人は、就業時間が週35時間未満の女性で、年収の壁を意識しています。
仕事を探しているが職につけていない完全失業者は、184万人います。就業希望はあり実際に働けるのですが、今は求職活動をしていない人は84万人です。完全失業者のうち1割弱の14万人は、仕事に就けない理由として技術や技能が要件に満たないとされています。希望する種類や内容の仕事がないと答えたのは3割程度の54万人です。
内閣府は技能や処遇が合わず働けない人が、153万人にのぼるとみています。技能の磨き直しやマッチングを進めれば、働き手として期待しやすい人たちです。持てる力を十分に発揮できる環境整備が喫緊の課題です。デジタル化などで求められるスキルが大きく変わる中、職業訓練やリスキリングは、企業と働き手の双方に欠かせません。
日本には、眠る働き手が約530万人もいることになります。パートなどで働く人が一定の収入を超えると手取りが減る年収の壁を是正し、働き手のスキルを磨き直すことで潜在的な労働力を掘り起こせます。
(2023年10月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)