目薬で近視の抑制

慶應義塾大学の研究成果がもとになった近視の進行を抑える目薬の候補薬がまもなく臨床試験に入ります。細胞内に不良品のたんぱく質がたまって生じるストレスを緩和する新しい仕組みの薬で、日本発の技術として注目されています。
近視は、目の前から後ろまでの長さが伸びてしまうことで起こる進行性の病気です。ずっと近くを見ていると目が伸びやすくなり、網膜の上でピントがあわなくなります。スマートフォンやタブレット端末などの普及で、近視の人は急増しています。2010年には世界で20億人弱でしたが、2050年には世界人口の半分にあたる50億人程度まで増えると試算されています。都内の中学校では95%の生徒が近視だったとの調査もあります。
ストレスで強膜が薄くなり、目が伸びて、近視が進みます。本来、細胞にある小胞体という器官が、たんぱく質の不良品を修復したり、除去したりする機能を持っています。これは小胞体ストレス応答と呼ばれています。慶應義塾大学は小胞体ストレス応答を調節する薬剤で近視の進行を抑えようとしています。注目したのは、体内で毒素のアンモニアをうまく取り除けない尿素サイクル異常症の治療薬として承認されている薬剤です。

(2023年11月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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