新型コロナウイルスで悪化していた診療所の経営が改善しています。財務省の発表によれば、2022年度の医療法人の経常利益率が平均8.8%でした。入院医療は提供せず、診療所のみを運営する1万8千の医療法人の平均の経常利益率は、2020年度に3.0%、2021年度に7.4%、2022年度に8.8%と改善しています。2020年度は新型コロナの蔓延で感染を恐れた患者が受診を控え、利益率が低率でした。
コロナ診療への手厚い報酬が、利益率を押し上げた要因の一つとみられています。コロナ前より検査が増えるなど、患者の受診行動が変化した可能性もあります。今回の調査では黒字の医療法人は75.9%に上っています。
内部留保にあたる利益剰余金は、2020年度の1億500万円から1億2,400万円へ増えています。2020年度から2022年度への増額幅は1,900万円で、18%伸びています。医療従事者の賃金を3%上げるには年140万円が必要です。2年間で増えた1,900万円の剰余金を使えば、3%の賃上げに伴う人件費増を14年間にわたって賄えるということになります。
財務省は現場の賃上げを進めつつ、診療所の報酬単価引き下げ目指しています。医療に投じる国費や保険料の伸びを抑えるため、医師の技術料にあたる診療報酬の本体部分をマイナス改定することが適当だと主張しています。
(2023年11月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)