肥満症薬の世界市場の急成長

世界の製薬大手が肥満症薬の開発を競っています。糖尿病薬を転用し、体重を減らす効果があり、海外では実用化された例もあります。世界市場は2030年に770億ドル(約11兆円)に膨らむという予測もあります。美容を目的として使われるケースもあり、適正な使用が課題となっています。
2021年に米国で肥満症薬として承認されたのが、ウゴービです。ウゴービは米国のほか、デンマークや英国などでも承認されています。ウゴービは、GLP-1受容体作動薬というタイプの薬です。血糖値を下げる働きがあるほか、中枢神経に働きかけて食欲を抑える作用があります。糖尿病の治療薬から転用されました。

肥満症薬の販売は、米国を中心に急拡大しています。米モルガン・スタンレー・リサーチは9月に従来予想を上方修正し、世界市場は2030年に770億ドルに成長すると推計しています。医薬品ではがん治療薬と並ぶ成長分野となっています。国民の4割が肥満とされる米国では、肥満を原因とした問題が出ています。肥満の人は、心臓病や高血圧などの症状が悪化しやすく、医療費は肥満でない人に比べ、年間1,860ドルほど高くなっています。
本来の用途とは異なり、美容目的で不適切な利用もみられます。国内でも、ウゴービと同じ仕組みで働く糖尿病の薬を、自費診療で投与する医師や個人輸入で使う人もいます。不適切な使用が広がれば、必要な患者に行き渡らない事態を招きかねません。

(2023年11月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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