子宮頸がん検診にHPV検査導入

国が推奨する子宮頸がん検診に、がんの原因となるウイルスの感染を調べるHPV検査が来年度から新たに加わります。現行の検査より早い段階でがんとなる可能性が分かり、陰性なら検診の間隔も長くなります。一方、陽性者への長期間の経過観察が重要となり、自治体が導入する際には、体制を整える必要があります。
子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。感染しても、約90%の確率で2年以内にウイルスが自然検出されなくなりますが、一部の人は持続感染し、数年から数十年かけて異形成という段階を経てがんになります。 国内で年約1万1千人が診断され、約3千人が亡くなっています。感染を防ぐHPVワクチンの接種や、定期的な検診を通じた早期発見・治療が大切となります。
子宮頸がん検診は、国が推奨する5種のがん検診の一つで、無料か少額の自己負担で受けることができます。国の指針は、20歳以上を対象に2年に1度の細胞診を推奨しています。HPV検査は、細胞がHPVに感染していないかを調べます。国立がん研究センターの2019年度版の検診ガイドラインは、30~60歳を対象に5年に1度の検診を推奨しています。HPV検査を、細胞診と同じ推奨度に位置づけています。
来年度にも自治体検診でHPV検査が導入可能となります。30~60歳について、自治体が、2年に1度の細胞診か5年に1度のHPV検査を選択できるようにします。30歳から5年ごとに受診勧奨する方針です。20代はウイルス感染が一過性のことが多いため、現行通り2年に1度の細胞診とします。細胞診とHPV検査の併用は、偽陽性が多くなるため認めないとしています。
性交経験のある女性の多くは、一生に一度はHPVに感染する機会があるとされています。HPV検査でも1~2割が陽性となりますが、多くはウイルスが自然に消失します。陽性だからといって、必ず細胞ががん化するわけではありません。また、がん化には数年~数十年かかります。このため、陽性の場合は、HPV検査で採取した検体を使った細胞診を改めて実施し、結果に応じて、精密検査を受けるとしています。重要となるのは、陽性者を長期的にフォローアップする体制です。

(2023年11月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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