難民認定申請者の増加

日本で難民認定を申請する外国人が今年急増しています。世界各地で紛争が多発、新型コロナウイルス感染防止の入国制限が解除されたことが背景にあります。難民申請者は、今年は9月までに1万1千人を超え、過去2番目の多さになろうとしています。難民申請者が最低限の生活を維持することも難しい状況に陥っている背景には、公的支援の欠如があります。
日本政府は、困窮している難民申請者に対して、唯一の公的支援金である保護費を給付しています。業務は公益財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部に委託しています。支給額も不十分です。保護費の内訳の一つである生活費は、一人1日当たり1,600円で、生活保護の基準を大きく下回ります。住居費は単身者の場合は、月6万円が限度額で、敷金・礼金の前金は支給されません。医療費は、いったん自己負担した上で、審査を受け精算されます。受け取れるまでの待機期間が長いことも問題です。
保護費は、日本が1981年に難民条約に加入した2年後に開始されました。日本では難民への生活保障に関する法令はなく、保護費支給も法的根拠がないまま行政措置として行われ、支給手続きの遅延や予算が枯渇しています。難民申請者の生活支援を保障する法律が必要です。日本が難民条約に入って40年あまりが経過しています。他の先進国に比べて、日本は難民の認定率は極端に低く、国内外から難民鎖国と批判されてきました。各国と比べると公的支援も著しく貧弱です。日本には、難民条約の加盟国として、難民を保護する責任があります。

(2023年11月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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