育児休業給付の受け取りを延長しようと、落選狙いで保育所に入所申請する事例が相次いでいます。入所がかなわず休業を続けることが延長の要件のためです。厚生労働省は、復職の意思を確認できるよう新たに申告書の提出を求め、支給を厳格にします。待機児童の実態が見えやすくなる期待もあります。
育休の給付は、休業180日目まで賃金の67%を受け取れます。180日を超えても原則子どもが1歳になるまで、賃金の50%を受給できます。保育所に落選した場合などは、例外として最長2歳まで延ばせます。この例外規定を利用し、手当をもらおうとするケースが多くみられます。
給付の延長手続きが簡略なことが背景にあります。申請者は保育所に入れなかった時に、自治体が発行する保留通知書と呼ばれる文書をハローワークに提出します。すぐに働く意思がなくても、保育園に落ちたとの証明だけで給付を受け続けられる可能性があり、落選狙いで入所を申し込む構図になっています。厚生労働省は、給付の延長を申し込む親に、詳細な保育所の申し込み内容などを記した申告書を求めるとしています。
希望しても保育所などに入れない待機児童の数は、4月1日時点で2,680人と、5年連続で過去最少を更新しています。しかし、家に近い特定の園だけを希望して入れなかったといった隠れ待機児童も、約6万6千人いるとされています。この中には、給付延長を目的に延長申請した人数も含まれています。
(2023年11月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)