バス路線の廃止や減便が全国で相次いでいます。新型コロナウイルス禍では利用客が離れ、全国の路線バス事業の9割が赤字になりました。苦境は続き、不採算路線の見直しが避けられない状況にあります。東京や大阪などの大都市圏も例外ではありません。
2021年度は、地域別の全ブロックで赤字となりました。企業別でも218社中、黒字は13社にとどまっています。大都市圏も厳しく、10年で完全廃止のバス路線は1万5,000㎞に及んでいます。全バス路線の3%にあたる規模です。路線は維持して減便するケースも多く、バスの総走行距離は2020年度、18年ぶりに30億㎞を割っています。
いずれも運転士を確保できなくなっていることが背景にあります。日本バス協会は、2030年度に3万6,000人足りなくなると試算しています。ネックは低賃金で、バス運転手の年収は2022年に399万円と、全産業平均の497万円より2割少なくなっています。時間外労働規制に伴う2024年問題で、人材の取り合いとなる大型トラック運転手の477万円に対しても不利になっています。路線廃止を補うため、自治体が中心となったコミュニティーバスの導入事例は、2021年度で3,717件と、10年で3割以上増えています。
国は独占禁止法の特例法を設けてバス会社間で地域の路線統廃合を進め、赤字を避ける仕組みを始めました。全国6地域で地域交通の見直しが進んでいます。スクールバスに地域住民のも混乗するといった各種施設の送迎と公共交通の連携なども模索されています。バスが消滅すれば交通空白地に許された自家用車による有償運送、いわゆるライドシェアが最後の手段となります。
(2023年12月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)