胃がん予防のために―Ⅱ

ピロリ菌の感染
ピロリ菌は胃の中で持続的に感染し続ける細菌で、1983年に発見されました。胃酸は強い酸性を示すため、それ以前は胃の内部に細菌は生息できないと考えられていました。ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素で胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。このアンモニアが水に溶けると、アルカリ性を示して局所的に胃酸が中和されるため、ピロリ菌は胃の中で生存し続けられます。
ピロリ菌の感染が長期にわたると慢性胃炎を引き起こし、それが萎縮性胃炎へと進行し、やがて分化型胃がんが発生しやすい状態を作り出します。また、ピロリ菌感染による慢性胃炎は、胃潰瘍や他の胃の悪性腫瘍、血液の病気などにも関連しています。WHOは、1994年にピロリ菌を確実な発がん因子と認定しました。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍や胃炎などの患者を対象としたわが国の調査では、10年の間に胃がんになった人のうち、ピロリ菌に感染していない人では0%(280人中0人)、ピロリ菌に感染している人では2.9%(1,246人中36人)であったと報告されています。

(よぼう医学 2023 秋号 №22)
(吉村 やすのり)

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