科学知の活用

総務省が発表した科学技術研究調査によれば、2022年度の日本の科学技術研究費総額は20兆7千億円(前年度比4.9%増)、2023年3月末時点の研究者数は91万人(0.2%増)と、いずれも過去最高を記録しています。GDP比は3.65%を占めています。
企業の研究費は総額15兆円を超えており、その9割超が応用・開発研究費に注がれており、科学や技術の社会実装を担っています。企業が投じる基礎研究費である1兆円をやや上回るのが大学等で、1.3兆円が費やされています。しかし、その開発研究費は2,180億円に過ぎません。
大学の科学的な知見、すなわち科学知をイノベーションとして社会に広めていく橋渡し役として、企業に期待される役割は大きなものがあります。大学が生み出す科学知を企業が活用する時、既存企業がそれを取り込んで生かす道筋と、大学関係者が自ら起業して企業人として知を生かす道筋が主に想定されます。
企業にとっては、社外の知を効果的に翻訳する仲介機能をどう構築するか、共有知識効果をどう回避するかといった中身を詰めていくことが肝要となります。それは、大学の科学知を社内に吸収する際にも当てはまります。大学発ベンチャーと大企業の協業もさらなる進展が大切となります。研究開発活動を得意とする大学発ベンチャーにとっては、顧客開拓に関する協業が持つ意義は特に大きく、経営人材の確保が鍵となります。

(2024年1月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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