人口戦略会議の提言

人口戦略会議は2023年7月に発足しています。今回の提言では、出生率が2015年に1.45に上昇後、2022年に過去最低の1.26まで下がったことなどをあげて、政府が取り組んできた少子化対策は、概して単発・対症療法的だったと言わざるをえないと指摘しています。減少要因や対策の調査分析が不十分で、深刻な影響を国民と情報共有する姿勢が、政府と民間に欠けていたとしています。
政府の国立社会保障・人口問題研究所が2023年4月に示した将来推計人口では、2100年の総人口が2020年の1億2,615万人から半減します。高齢化率は40%になり、人口は減り続けます。このままの状態が続けば、完全に社会保障が破綻します。地域インフラの維持も難しくなり、社会の様々な場面で選択肢が狭められてしまいます。
出生率が回復する展開を理想とし、人口が8,000万人、高齢化率が30%を目指すとしています。出生率を2040年頃までに1.6、2050年頃までに1.8に引き上げる必要があります。人口8,000万人社会が実現した場合、2050~2100年の実質GDPの伸び率は0.9%程度を維持できるとしています。
目標を実現するために重点を置く2つの具体策を示しています。人口減少のスピードを緩和・安定化させる定常化戦略と、現在より小さい規模でも成長力のある社会をつくる強靭化戦略です。定常化戦略としては、意欲ある男女が結婚・出産できるよう若年層の所得向上や、非正規雇用の正規化といった雇用改善をあげています。強靭化戦略では、生産性の低い企業や産業、地域の構造改革や教育の質の向上などもあげています。
戦略の一環として国内に永住・定住する外国人との共生にも触れています。人口や単純労働者を補充する目的での移民政策ではなく、高い技能を持つ人材を労働目的で積極採用する体制を整えるべきだとしています。人口が減少しても成長できる社会を目指すことが必要になります。縮小と停滞の未来を変えるための行動を今すぐに始めるべきです。

(2024年1月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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