戸建てに住んでいる高齢者が、世代間の交流を目的として大学生らに貸し出す事業があります。高齢者が部屋を貸したい場合、自治体が委託したNPOなどが仲介窓口になります。仲介者が大学などに通う学生らとマッチングします。家主は学生から光熱費など居住にかかる費用として毎月3万円前後を受け取ることが多いとされています。
事業の対象になるのは、①持ち家である、②学生専用の一部屋とリビングなどの共用スペースがある、③経済面でも健康面でも自立した生活をしているの3つの条件を満たす55歳以上です。同居のための決まり事は、当事者同士が話し合って決めます。入居期間は、原則学生が卒業するまでですが、双方の健康や家庭事情で同居が難しくなった場合などは話し合いを経て、合意のもとに途中で解消できます。
安全面の対策として、家主は、学生の用意した出身高校の担任教師や身元保証人による推薦状のほか学生証などを確認できます。NPO法人は、学生のボランティア活動経験といった社会貢献への意欲も聞き取り、家主に伝えます。複数回の面談を通じて家主は学生の人柄を確認します。面談を経ておよそ1カ月程度、試しに同居する場合もあります。交流して性格が合わないと感じれば、同居の解消もできます。
同居で互いを助け合う関係ができます。毎日挨拶を交わす相手がいることが安心感につながり、社会的孤立の解消に役立ちます。人によっては、他人との同居が精神的な負担になる場合もあり、学生や仲介者としっかり話し合い、納得した上で生活を始めることが大切です。
(2024年1月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)