厚生労働省は、2018年にモデル就業規則について、副業を認める内容に改正しました。多くの企業は、情報漏洩や過重労働リスク、離職を促すといった懸念から社員の副業には後ろ向きでしたが、経団連の会員企業では、2022年の副業容認率が53.1%と、2017年比で24.4ポイントの大幅増となりました。しかし、副業実施率は伸びていません。パーソル総合研究所の調査によれば、正社員の実施率は2023年時点で7.0%で、2018年時点から逆に低下傾向にあります。リクルートの調査でも、2022年時点で9.9%とほぼ横ばいで、容認率との差が目立ちます。米国で副業を持つ人の比率は39%です。
求人と求職のニーズやスキル・経験が合わない雇用のミスマッチに加え、2つのずれが背景にあります。1つは副業案件の不足です。副業に対する企業の期待と働き手の目的もずれています。働き手が副業をする理由は、収入を増やしたい、1つの仕事だけでは生活費自体ができないが上位となっています。本業以外での仕事の経験などを気づきや成長につなげる越境学習のような人材育成、採用強化や離職防止といった観点が欠けています。
地方企業の副業でもミスマッチがあります。人材開発と地方創生の一石二鳥という意味で副業×地方は相性が良い組み合わせですが、課題もあります。テレワークが進み、遠隔地にいても地方企業に携わりやすくなりました。故郷に貢献したいといった、やりがいを重視する層の希望者が多いのも特徴となっています。副業先メンバーとのコミュニケーションの難しさがあります。仕事の内容説明や要件定義が曖昧で、末期した後のマネジメントの難しさがネックになっています。
労働力不足の状況を見据えると、特に地方企業は副業人材を受け入れざるを得ない状況に直面すると思われます。副業希望者と企業を引き合わせる人材サービスや支援機関の役割もさらに重要になります。企業が外部人材の活用に前向きになれるか、副収入以外に目を向ける働き手が増えることの認識も大切です。
(2024年1月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)