厚生労働省は、医療機関を受診した際にかかる初診料と再診料を引き上げる案を示しています。増額分を原資に医療機関に待遇改善を促し、看護師や技師といった医療職の人手不足の緩和につなげます。医療従事者のための賃上げの財源確保は大切ですが、その負担は主に現役世代に跳ね返ります。
初診料などの診療報酬は、医療費の総額と同じで、2023年度予算ベースで48兆円ほどです。財源の5割は保険料が占め、残りの4割は税金、1割を患者の窓口負担で賄っています。およそ半分を占める保険料は収入に応じた負担となるため、どうしても相対的に現役の負担が大きくなります。会社員は会社と負担を折半するとはいえ、35~39歳の保険料は1人あたり年間32万円ほどと、2021年度時点で85~89歳のおよそ4.5倍にあたります。一方で、35~39歳の医療費は、85~89歳の7分の1にとどまっています。医療の受益と負担は世代間の格差が大きくなっています。
(2024年1月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)