政府は、能登半島地震の被災地の深刻な高齢化を踏まえ、住宅に被害が出た世帯への支給額の上乗せを決めました。震度6弱以上を記録した自治体で、人口に占める65歳以上の比率は4割を超え、過去の地震と比べても高くなっています。熊本地震などでなかった復興本部を置いて、国が復興を主導する姿勢を前面に出しています。
震度6弱以上を記録した石川県の七尾、輪島、珠洲各市など3市4町の65歳以上の比率は、2020年の国勢調査をもとに算出すると43%にも達しています。中越地震で震度6弱以上だった自治体の22%、熊本地震の28%に比べて高齢化率が高くなっています。
高齢者が多い避難者を呼び戻し、新たに復興の担い手を招くのは容易ではありません。集落のあり方そのものを再設計する必要があり、自治体単独で費用や人的資源を賄うのは困難です。農林水産業や観光業といった基幹産業も厳しい状況です。海底の隆起で湾港の機能回復には大規模な工事を要します。自治体が管轄する港や河川の復旧を、国が代行する措置を講じるとしています。
高齢化が進んだ地域で、国の関与がないまま地域の経済、生活基盤を立て直すのは困難です。特殊事情を多く抱える能登の復興は費用が膨らむ懸念もあります。経済効果を見極めながら、適正な計画をつくり、必要に応じて修正する柔軟性が大切です。
(2024年2月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)