希少がんのオンライン治験

希少がんは200種近くあり、一つ一つの患者は少ないのですが、全て合わせるとがん全体の約15%に達し、毎年約10万人もの患者が新規に診断されています。具体的な病名としては、脳腫瘍、眼腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、中皮腫、肉腫などがあります。
希少がん対策は、2012年の第2期がん対策推進基本計画から施策に取り入れられました。2006年のがん対策基本法制定以降、肺がんや大腸がんなどの患者数が多いがんは、全国どの病院でも科学的根拠に基づいた標準治療を受けることができる体制が整えられました。しかし、各希少がんにおいては治療に関するデータが少なく、標準治療の確立が難しいとされています。



国立がん研究センターは、2014年に希少がんセンターを開設しています。2017年に希少がんの研究開発と、遺伝子変異を調べて患者ごとに薬を選ぶがんゲノム医療を推進する、産学協同プロジェクトをスタートしています。プロジェクトでは、登録した希少がん患者が有する遺伝子異常の情報を含む臨床情報を蓄積し、特性を研究するとともに情報に基づく臨床試験を行い治療法の確立を目指しています。現在、3千人以上の患者が登録し、30の治験が行われています。
2023年にオンライン治験が導入され期待を集めています。オンライン治験は、国立がんセンター中央病院と地方にある提携医療施設、患者の三者で行い、治験薬が飲み薬の場合にのみ実施できます。患者が治験に同意すると、提携施設で治験に関する検査を実施します。国立がんセンター中央病院と検査結果を共有し、提携施設の主治医同席のもとオンラインで診療し、治験薬を患者宅に郵送します。通常の診療は提携施設が担当し、患者は国立がんセンター中央病院を一度も訪れず治験を受けることができます。
2019年には、遺伝子情報を網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査が保険適用となり、標準治療が終了した固形がんの患者や、希少がん患者らが対象となりました。今のところ高額な上に治療に結びつくのは1割程度といった課題がありますが、この検査や国立がんセンター中央病院のプロジェクトなどで遺伝子に関するデータが蓄積されていけば、将来は希少がんの治療が進む可能性があります。

(2024年1月14日 愛媛新聞)
(吉村 やすのり)

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