がんゲノム医療の普及-Ⅱ

がん遺伝子パネル検査
患者のがん組織や血液を使い、がん細胞の100種類以上の遺伝子の変異を解析できる検査は、がんゲノムプロファイリング検査(がん遺伝子パネル検査)と呼ばれます。費用は56万円で、2019年6月に公的医療保険が適用されました。利用者は年々増加し、2022年度は2万人超が受けています。
検査の課題の一つは、検査を受けても、治療に結びつく割合が少ないことです。厚生労働省の集計によれば、保険適用から3年間に実施されたパネル検査約3万例のうち、治療薬の選択肢が示されたのは44.5%です。実際に治療薬が使われたのは全体の9.4%にとどまっています。
検査を受ける時期が遅いとの指摘があります。現状ではパネル検査は、有効性や安全性が確認された最善の治療とされる標準治療が効かなくなった患者の最後の選択肢と位置づけられることが多くなっています。財政面や検査態勢を踏まえれば、治療薬を必要とする全てのがん患者に実施することは困難です。検査の結果が出るまでに4~6週間かかるので、標準治療が終わった段階の患者は、薬の候補が見つかっても体調が悪くて、薬が使えないこともあります。

 

(2024年2月4日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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