環境負荷への懸念が牛肉業界に逆風となりつつあります。国連環境計画(UNEP)は、2023年12月に公表した気候変動と食料に関する報告書において、食料関連が人為的な温暖化ガス排出量の3割を占めるとしています。
家畜や飼料を含む畜産業は、食料関連の排出の多くを占めています。中でも牛は飼育に大量のエサや水を必要とし、ゲップやおならに温暖化ガスのメタンが多く含まれるため排出量が多いとされています。UNEPは、報告書で食料関連の温暖化ガス削減に向けて、植物性由来食品の活用や培養などによる代替肉への切り替えを進めるよう提言しています。
牛肉生産の環境負荷への認識は、一部で消費量の下押し要因になりつつあります。ドイツでは、若年層を中心に環境保護の観点から菜食主義に転向したり、代替肉に食生活を切り替えたりする動きが広がっています。畜産が主要産業のニュージーランドは、牛のゲップなど農業の温暖化ガスの排出に課税する方針を打ち出しました。畜産業からの温暖化ガス排出量が、国全体の排出量の5割を占め、国として排出量削減対策は避けて通れない問題となっています。
(2024年2月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)