パーソル総合研究所がアジア太平洋地域(APAC)の14カ国・地域を対象に実施した働く人の意識調査によれば、管理職を目指す人の割合は、日本は男女平均で21.4%でした。14カ国・地域中、最下位です。自分では担えない重責だと感じる人もおり、日本では特に管理職を敬遠する風潮が顕著になってきています。
処遇と役割のバランスを欠いているのが一因です。2022年の賃金構造基本統計調査によれば、平均年収は課長783.7万円、部長913.3万円です。非役職者の年収のそれぞれ1.7倍、2.0倍に上ります。しかし、役職で平均年齢が違うので、同年齢なら年収差は縮まります。日本の管理職の処遇は決して高くありません。
一方で役割は広がるばかりです。1999年以降、セクハラ、パワハラなどへの法的な対応が企業に課せられました。65歳までの継続雇用も始まり、年上の部下を持つケースも増えています。働き方改革で、残業削減にも目を光らせなくてはいけません。管理職に必要なマネジメントスキルはますます複雑化し、難易度が上がっています。管理職は、主に①業務管理、②部下の育成、③経営方針の徹底の3つの役割を負っています。
コストパフォーマンスを重視する若い世代にとって、管理職は苦労が多い割に収入も限られるなどコスパの悪い職務に映ります。しかし、リクルートエージェントの求人・求職データによれば、管理職の求人は、2016年度と比べて2022年度は3.67倍に増えました。転職した管理職も3.13倍に上ります。管理職には複雑で多様なマネジメントスキルが求められています。複数の企業を渡り歩くプロ経営者が企業社会に根付いたように、プロ管理職なら存在価値が高く評価されるかもしれません。
(2024年3月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)