中小企業の低い生産性

中小企業庁によれば、2020年の日本の廃業率は3.3%で、英国の10.5%、米国の8.5%よりも半分以下の水準です。開業率も日本は5.1%にとどまり、英国の11.9%、米国の9.2%と2倍近い開きがあります。日本は他の先進国に比べて、企業の新陳代謝が少ないと言えます。
中小企業にとって、大企業との太い取引がセーフティーネットとなる面はあります。税制優遇や補助金もあり、家族経営を出発点とした中小企業が規模を大きくしつつ、古い経営体制のまま生き残る環境を生み出してきました。半面、生産性を高める取り組みは不十分です。財務省の法人企業統計では、2021年度の大企業製造業の従業員1人あたりの付加価値額は1,460万円でした。中小製造業は542万円で低迷したままです。
日本の中小企業政策は、政府によるお膳立てが厚すぎる側面があります。声を上げなくても経営環境が改善することが続けば、中小企業の競争力をそぐ懸念が生じます。取引先を対等に扱わない大企業にも問題があるとは言え、折衝の場を設ける責任は中小企業側にもあります。経営の維持には自律した活動が不可欠であることも伝えるべきです。

(2024年4月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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