賃金の伸び率

厚生労働省は、2023年の賃金構造基本統計調査の概況を公表しています。一般労働者の平均賃金は過去最高を更新しましたが、世代別にみると大企業の35~54歳の賃金が減るなど、若手に重きを置く傾向が目立っています。働き方が多様化し、企業の人的投資のあり方も変わってきています。
従業員1,000人以上の大企業では、平均賃金が34万6,000円と前年比0.7%減っています。人手不足の業種で非正規雇用による人材の穴埋めが広がったことが影響しています。非正規労働者の増加が、平均賃金を押し下げる要因となっています。大企業の年代別では、35~39歳で2.1%、40~44歳で0.6%、45~49歳で1.3%、50~54歳で1.2%のマイナスでした。一方で若手は伸び、20~24歳は3.0%、25~29歳は1.6%増えています。相対的に人数の少ない若手の人材確保を優先し、新卒らの給与を手厚くしているとみられます。
日本の労働構造の変化も、賃金に反映されています。日本の賃金形態は、終身雇用と年功序列の色が濃く、年齢に応じて給与が上がる傾向が強かったのですが、企業側が若い人材の確保に注力したことで変わってきています。元々手厚かった中堅社員の給与は、若手引き上げのあおりを受けて減った可能性があります。年齢に応じて単純に給与が上がるのではなく、労働市場の中で人材価値を見た時の評価額が、給与に反映されるようになってきています。
一方で中小企業は賃金が伸び、従業員100~999人で2.8%増、10~99人で3.3%増でした。どの世代でも賃金が増えています。大企業の賃金を100とした時の10~99人規模の企業の賃金指数は85.0で、前年から3.3ポイント上昇し、格差は縮小しています。

(2024年3月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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