企業における転勤への対応

日本は社員の同意のない転勤が多くなっています。リクルートワークス研究所の国際調査によれば、本人が同意しなくても業務命令で転居を伴う勤務地の変更がある人は、日本で19%近くに達します。3%の米国やデンマークと比較すると6倍以上です。



転勤に拒否感を持つ人が増えています。エン・ジャパンの調査によれば、69%が転勤は退職を考えるきっかけになると答えています。就活生にとっても大きな関心事になっており、マイナビが2025年卒の学生向けに実施した調査でも、転勤が多い会社に行きたくないとした人は3割を超えています。しかし、新たな人間関係を築き、小さな拠点で大きな裁量の仕事を経験できる転勤は、企業にとって重要な人材育成法とされてきています。
企業の転勤の対応が変わりつつあります。引っ越しを伴う異動に手当を手厚く支給し、私生活の変化に報いる動きが広がっています。共働き世帯の増加などに伴い、若い世代を中心に転勤への拒否感が強まっており、企業都合の転居は離職の理由になりかねません。全国に拠点を持つ企業にとっては、転勤前提の人事制度をすぐに解消することは難しく、経済支援で納得感を持たせようとしています。
人手不足にあえぐ企業は、今いる社員一人ひとりにベストな状態で働いてもらう必要があります。会社都合だけでなく、従業員都合に発想を切り替え、転勤についての要望を丁寧に聞いて対応することが必要になってきます。

(2024年4月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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