全世帯の半分弱が一人暮らしになる未来がきます。国立社会保障・人口問題研究所は、単独世帯の割合が2050年に44.3%になり、特に高齢層で増えると推計しています。一人暮らしの女性は貧困率が高く、男性は社会的に孤立する傾向の強いことが明らかになっています。この貧困と孤立さえ解決されれば、単独世帯の増加そのものが悪いわけではありません。
女性の貧困の理由は低年金です。低年金の理由は、現役時代に低所得だったからです。雇用の規制緩和によって正規と非正規を分け、労働市場を二重化したことが原因です。働く女性の過半数が非正規なのは、夫に扶養されていれば女性の収入は家計補助程度で良いだろうという理由からです。そこに家計支持者であるシングル女性やシングルマザーが参入していきました。
男性の孤立度が高まった大きな理由は、離別と非婚の増加です。女性は離別すると子を引き取り、シングルマザー世帯になることが多くなります。経済的な困難を背負いますが、親子関係は維持できます。企業など男性ばかりの同質的な組織は、覇権ゲームの世界ですから心を許す友人関係はできにくく、定年後も周囲の人々とのつながりが希薄になりがちで、一人暮らしになると社会的に孤立しやすくなります。
男女ともに非婚の傾向が進んでいるのは、家族形成コストが非常に高くなっているからです。30代男性の婚姻率は年収と相関しています。コストは経済面だけでなく、女性の場合は、時間と家事労働が重くのしかかります。家族形成コストが高すぎるので、事前に回避する行動が未婚化であると分析する社会学者もいます。このコストをもっと社会が共有して減らしてあげれば、結婚回避行動は減ると思われます。
高齢単独世帯への対処としては、エンパワーメントネットワークを増やすことです。お金を給付するだけでは、実際の自立に結びつかないことが多いのです。地域コミュニティーなどとの人的なつながりを同時に考える発想が必要です。これからは、地域住民も巻き込んだ持続可能なコミュニティーづくりが大切で、それに成功している地域は安心して暮らせるし、人が集まって新しいサービスや仕事も生まれます。
貧困と孤立に対処するには、定年制を廃止して高齢者も働けるようにすることも大切です。若者が減り、今では女性の労働力化はほとんど限界まできています。働ける人はどんどん働けば、人ともつながります。多くの高齢者は、在宅で最期を迎えることを望んでいますが、介護保険につながれば、ケアマネジャーが付いてデイサービスやホームヘルプを利用できますので、孤立しないですみます。
これまで家族は一体と考えられてきましたが、今では家族もそれぞれの利害を持った共助と言えます。家族関係を良好にしておかないと助け合えません。家族の中でも、かけて良い迷惑とかけてはいけない迷惑があります。家族は自助ではなく、共助であると考え、お互いを尊重しあう態度が大切です。
(吉村 やすのり)