子宮内膜症の薬物療法

 子宮内膜症の薬物療法の第1選択薬は、長期に安全に使用可能な低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(いわゆるピル)とジエノゲストである。まず、コストとリスクの観点からは、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬が使用しやすい。特に月経困難症については高い有効性が示されており、鎮痛剤でコントロール不良なレベルの疼痛があれば、子宮内膜症の進行予防という観点からも、早期からピルの投与を検討すべきであると考えられる。さらに最近、プロゲステロン作用の特異性が高く、アンドロゲン(男性ホルモン)作用などの副作用が少ない特徴により、単独で長期に使用可能なプロゲスチンとしてジエノゲストが発売され、低用量ピルでコントロール不良な症例にも有効性が期待されている。特に、血栓症のリスクという観点から、低用量ピルが使用しにくい40歳代の症例では有用な薬剤である。

最近子宮内膜症に対する薬剤としてレトロプロゲステロン製剤が再び注目されるようになってきている。ジドロゲステロン(商品名:デュファストン)は、半世紀前からプロゲステロン製剤として切迫流早産や月経異常に使用されていた。1970年の論文で、私ども教室の大先輩である野嶽教授が、ジトロゲステロンを子宮内膜症に臨床応用されている。その後ダナゾールやGnRHアゴニスト製剤が開発され、ジトロゲステロンは全く使用されなくなってしまった。しかし近年、副作用が少なく、コストが安価で長期投与ができ、排卵を抑制しないために、子宮内膜症の治療を行いながら妊娠も可能であることより、再び注目されるようになっている。野嶽教授の御彗眼に感服!

(吉村 やすのり)

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