文部科学省によれば、通信制大学の学生数は2005年度に20万人を超えました。その後減少が続いて2020年度に16万人程度となりましたが、新型コロナウイルス禍でオンライン学習が浸透するなどして増加に転じ、2023年度は18万4,499人に増えています。年代別の見ると、特に18~22歳の学生の増加が著しく、2023年度は3万3,931人で5年前から倍増しており、全体の2割弱を占めています。
私立大学通信教育協会の資料によれば、大学の通信教育は1950年に6大学で開始されました。1983年に完全通信制の放送大学が設置され、1990年代に入ると開設が相次ぎました。2024年度時点で通信制を持っているか完全に通信制の大学は、40校超に上っています。通信制大学は校舎設備などへ多額を投資する必要がなく、授業料を安く抑えられるというメリットもあります。
企業からリスキリングを求められる社会人学生からの注目度も高くなっています。時間とコストの制約が少ない通信制大学を選ぶ人は、世代を問わず今後も増えることが予想され、新たなマーケットとして拡大する可能性があります。通信制大学は、入学時に学力試験を課さず、書類審査のみとする例が多く、学生数が増える一因になっています。しかし、4年間で卒業した学生は、2022年度で53%にとどまっています。
大学設置・学校法人審議会は、ドワンゴと日本財団が構想する通信制大学であるZEN大学の新設を答申しました。通学不要でオンラインで学士号を取得可能です。学部は知能情報社会学部のみで、数理やデジタル産業などの分野から科目を選択して学ぶことができます。
(2024年10月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)