デンマークの製薬大手ノボノルディスクが肥満症治療薬の飲み薬タイプについて、2030年までの投入を目指しています。米イーライ・リリーも2026年にも申請します。肥満症領域は、スイスのロシュや米ファイザー、スタートアップなども相次ぎ参入を表明しています。巨大市場を巡る開発競争は手軽に服用できる飲み薬タイプが主戦場となりそうです。
肥満症薬は、脳に満腹であることを伝えるホルモンであるGLP-1の仕組みを利用した治療薬が登場したことで急成長しています。米モルガン・スタンレーは、世界の肥満症薬市場は2030年に1,050億ドル(約16兆円)と予測するなど、市場のさらなる拡大を予想しています。
各社が開発を加速させる背景には、GLP-1薬が肥満症以外にも効果が期待される点があります。元々GLP-1薬は体内でインスリンを作らせ血糖値をコントロールする糖尿病の治療薬として開発された医薬品です。最近の研究では、体重減少効果のほか心不全や腎臓病といった循環器の病気、アルツハイマー病やパーキンソン病といった脳神経の病気にも効果が期待できるという報告が相次いでいます。様々な病気に効果がある万能薬としても期待が高まっています。
(2024年11月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)