医療行為による死亡事故の原因を調べ再発防止につなげる医療事故調査制度は、2015年10月に始まりました。医療法では、提供した医療に起因するか、その疑いがあり、予期していなかった死亡事故が起きた場合、病院長は第三者機関の医療事故調査・支援センターに報告しなければならないとされています。その後、院内で調査し、結果は遺族に説明することが求められています。
報告数は横ばいが続き、ここ数年は年間300件台で推移しています。センターに報告するかは病院長の判断になるため、実際の医療事故はもっと多い可能性があります。2023年末までの実績では、600床以上の大きな病院のうち、複数回報告したことがある病院が6割だった一方、1回も報告したことがない病院が2割も占めています。都道府県別で人口100万人あたりの報告数をみると、宮崎が最多で5.2件、福井が最少で1.0件となっています。
制度の目的は、個人の責任追及ではなく、再発防止や医療の質向上ですが、病院長が十分に理解しているとは限りません。日本医療安全調査機構の宮田哲郎常務理事は、調査をすると遺族からの訴訟が増えるという誤解や、忙しいのに仕事を増やしたくないという感覚がいまだにあります。
(2024年11月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)