白血病は血液がんの一種で、日本で毎年約1万人が亡くなります。その治療を免疫療法が大きく変えています。以前は入院して強力な抗がん剤の投与を受けました。吐き気や腹痛、脱毛などの副作用に耐えてがん細胞を減らした後に、ドナーの血液から採った造血幹細胞を移植していました。しかし、免疫療法の登場で治療が一変しました。
米アムジェンのブリナツモマブは副作用が少なく、肩から提げる携帯ポンプで自動的に投与できます。通学しながら週2回の通院で治療を続け、移植を経て回復しました。
この薬はバイオ医薬品の一種、抗体医薬の最新型で、二重特異性T細胞誘導抗体(T細胞エンゲージャー)と呼ぶタイプです。抗体医薬の基本構造はY字型で、2本の腕を持っています。従来は左右の腕が同じ構造で、1種類の分子にしか結合できませんでした。一方で新型の抗体は腕の構造が異なり、片方はがん細胞の目印となる分子に、もう一方はT細胞の分子に結合して橋渡しをします。T細胞が活性化してがん細胞を攻撃します。正常な細胞に作用しにくく、副作用を抑えられます。
(2024年11月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)